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名古屋地方裁判所 昭和47年(行ウ)23号 判決

一宮市萩原町西宮重五二番地

原告

伊藤真鋒

右訴訟代理人弁護士

石川康之

成瀬欽哉

一宮市明治通二丁目四番地

一宮税務署長

被告

伊藤新吉

右指定代理人

遠藤きみ

大崎文男

井上昇

大橋哲雄

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

(原告)

被告が原告に対し昭和四五年一〇月五日付でなした昭和四二年分、同四三年分、同四四年分の各所得税更正処分ならびに過少申告加算税賦課決定処分(但し、いずれも昭和四六年三月二日付異議決定により一部取消消後の分)をいずれも取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

(被告)

主文同旨。

第二、当事者の主張

(請求の原因)

一、原告は被告に対し、昭和四二年ないし同四四年分の各所得税につき法定の申告期限内にそれぞれ別表(一)(二)(三)(課税処分表)の各「確定申告額」欄記載のとおり申告したところ、被告は昭和四五年一〇月五日で別表(一)(二)(三)の各「更正および賦課決定額」欄記載のとおりそれぞれ更正および過少申告加算税賦課決定(以下、これらを本件課税処分という)をなした。

二、そこで、原告は被告に対し異議申立をしたところ、被告は昭和四六年三月二日付で別表(一)(二)(三)の各「異議決定額」欄記載のとおりいずれも原処分の一部(但し、昭和四三年、同四四年分過少申告加算税は全部)を取消す旨の決定をなした。

三、さらに、原告は昭和四六年四月二日、訴外国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は昭和四七年五月二五日付でいずれも棄却する旨の裁決をなした。

四、しかしながら、本件課税処分は適法手続にもとづかず、また理由のない推計課税によるものであるから違法である。

よって、原告は被告に対し本件課税処分(但し、いずれも前記異議決定により一部取消後の分)の取消を求める。

(請求原因に対する認否)

請求原因第一ないし第三項の事実はすべて認め、第四項は争う。

(被告の主張)

一、原告は、本件係争各年当時、一宮市萩原町西宮重五二番地において繊維受託加工業(通称子機)を営んでいた。

二、推計課税の許容性について

被告は、原告から提出された確定申告書を調査したところ、その営業の実態等に照らして過少な申告と認められたうえ、申告書の事業所得金額欄には所得金額および事業専従者控除額が記載されているのみで、収入金額および必要経費の記載がなく、収支計算書の添付もなかったため、原告の申告した所得金額が果して所得税法の規定にもとづいて正当に算出されているか否かを確認する必要があったので、昭和四五年七月下旬頃から係員をして実地調査を行わせた。ところが、原告は、係員が再三再四調査に応ずるより求め、かつ係争年当事の営業概況および申告にかかる事業所得金額の計算根拠等について説明を求めても、これに応じなかったので、被告は原告の事業所得金額を実額にて計算することができなかった。

そこで、被告は、やむを得ず、原告の取引先等について原告との取引状況あるいは原告の事業規模等の調査を行ったうえ、合理的な推計により係争各年分の事業所得金額を算定し、なお、昭和四二年分の所得については、別途調査により把握した譲渡所得金額をも加えて原告の所得を算定し、本件更正処分をなしたものである。

三、総所得金額の算定について

1. 営業所得金額の計算については、被告は、前記のとおり原告の取引先等について可能な限り調査して得た資料により係争各年分の売上金額を把握し、右金額に後述の方法で求めた同業者の平均算出所得率を乗じて算出所得金額を算定し、これから後記特別経費、事業専従者控除額を控除して、本件係争各年分の営業所得金額を算定した。

2. 昭和四二年分については、右営業所得金額のほか、後記土地の譲渡所得金額があるので、これを加えた。

3. 右の所得金額算定の内容は、別表(四)(総所得金額計算表)記載のとおりであり、以下四に詳述する。

四、1. 売上金額

昭和四二年分 三、二二五、四四二円

昭和四三年分 三、二一六、六五八円

昭和四四年分 三、三五三、九四七円

訴外尾西紡織工業協同組合、同虫鹿株式会社、同広瀬株式会社からの収入金額である。

2. 算出所得率、算出所得金額

昭和四二年分 六三・二九パーセント

二、〇四一、三八二円

昭和四三年分 六〇・七九パーセント

一、九五五、四〇六円

昭和四四年分 六三・五四パーセント

二、一三一、〇九七円

原告が織機四台を使用して繊維受託加工業を営んでいたことから、被告は、原告の納税地を所轄する一宮税務署管内において原告と同種の事業を営む個人で昭和四二年分ないし四四年分青色申告者の中から、別紙「同業者選定基準」記載の基準(1)(2)のいずれにも該当するものを係争各年とも各八名を原告の営業規模等と同程度と認められる同業者として選定し、右同業者八名の昭和四二年ないし四四年分の売上金額および算出所得金額(売上金額から一般経費を控除した金額をいう)を求め、さらに別表(五)(六)(七)(算出所得率計算表)記載のとおり、これらの者の算出所得率八件の単純平均値を昭和四二年分六三・二九パーセント、同四三年分六〇・七九パーセント、同四四年分六三・五四パーセントとそれぞれ算出し、これを原告の各年分の算出所得率とみなした。

なお、一般経費として計上される建物以外の減価償却費については、原告が減価償却方法の選定届出をしていないため定額法によることになるので、基準となる同業者のうち減価償却方法を定額法以外の方法で行っている者については、すべて定額法により計算しなおして右各同業者の算出所得金額を算定した。

3. 特別経費

(一) 雇人費

昭和四二年分 六五二、四五五円

昭和四三年分 七三〇、六四七円

昭和四四年分 八五〇、三一七円

雇人費については、原告の妻から使用人は女子三名であるとの回答を得たのみで実額による計算ができなかった。そこで、被告は原告の使用人を女子三名と認め、尾西毛織健康保険組合に所属する女子組合員一人当たりの平均賃金が別表(八)記載のとおりであるので、これを原告方従業員一人当たりの平均賃金とみなして雇人費を算定した。

(二) 建物減価償却費

昭和四二年ないし四四年分

各二七、四七一円

原告が営業に供していた建物は別紙物件目録記載(一)(二)の建物であるが、右建物の昭和三九年一月一日当時の再建価額はいずれも四〇八、〇六〇円(坪当たり再建価額二二、六七〇円×床面積一八坪=四〇八、〇六〇円)であり、これを基礎に「全国木造建築費指数」を用いて各建物の取得価額を推計すると別表(九)(建物取得価額算定表)記載のとおり(一)の建物の取得価額は二三五、九六五円であり、(二)の建物のそれは二五六、三六八円である。そして、その償却率は〇・〇六二(耐用年数省令別表一一により木造工場の耐用年数一六年、同令別表一〇により耐用年数一六年の定額法償却率は〇・〇六二)であるから、これを所得税法施行令一二〇条一項一号イにもとづく定額法の算式

〔取得価額-(取得価額×〇・一)〕×償却率=減価償却費にあてはめて計算した金額(別表(一〇)減価償却費算定表)をもって原告の係争各年分の建物減価償却費とした。

4. 事業専業者控除額

昭和四二年ないし四四年分

各一五〇、〇〇〇円

5. 譲渡所得金額

昭和四二年分 一四三、四二三円

昭和四二年分については、営業所得金額のほか、一宮市萩原町富田方柳原の土地にかかる譲渡所得金額一四三、四二三円がある。

五、以上によれば、原告の本件係争各年における総所得金額は前記別表(四)(総所得金額計算表)記載のとおりであり、所得控除額は前記別表(一)ないし(三)(課税処分表)記載のとおりであるから、いずれもこれを差引いた金額の範囲内でなされた本件課税処分には違法はない。

(被告の主張に対する認否)

一、被告の主張一の事実は認める。

二、同二の事実は否認する。

三、同三の事実のうち、被告主張の算出所得率・算出所得金額・特別経費・差引営業所得金額、総所得金額を争い、その余は認める。

四、同四の事実のうち、売上金額・事業専従者控除額・譲渡所得金額を認め、その余は否認する。

五、同五の事実のうち、所得控除額が被告主張のとおりであることは認めるが、その余は否認する。

(原告の主張)

調査手続の違法性について

更正処分は、国税通則法二四条の規定するように納税申告書に記載された課税標準・税額等が税務署長の調査したところと異なる場合に、その調査したところにもとづいてなされるものであるが、右調査は納税者の権利ないし利益を保護する手続としての意味を有するから更正処分の前提条件をなしている。従って、その調査が違法であれば、それにもとづく更正処分もまた違法になると解すべきである。このように解してはじめて、納税者に対し憲法三一条の適正手続保障の趣旨に沿った実質的な救済が与えられることになる。

そして、申告納税制度のもとにおいては、納付すべき税額は納税者の申告によって確定するのが原則であり、しかも調査をなすことが納税者に事実上重大な不利益を与えることは明らかであるから、調査権の行使が許されるのは当該申告書の記載の適正でないことにつき合理的疑いの存するときに限られるべきである。そして、税務調査が国税犯則取締法にもとづく強制捜査と本質的に異なる任意調査であるから、調査対象者において適切に応答できるよう調査理由を具体的に明示してなすべきである。さらに、調査深度の問題にしても、任意提出にかかる帳簿書類等を検査することができるのみで、納税者の営業活動を停滞させたり、得意先や取引銀行等に対する信用を失墜させるような態様においてなすことは許されない。とりわけ、いわゆる反面調査は、納税者の信用を毀損するのみならず、調査の対象とされた第三者の営業活動にも重大な支障を与えるから、納税者に対する直接調査のみでその目的を達することのできない事項に限ってなすことができるものである。

本件において、被告は、原告提出の係争各年分の所得税確定申告書が適正であることにつき何ら合理的な疑いが存しないのに調査権を行使し、しかも原告が被告の直接調査に協力する旨申し入れたのにかかわらず、調査理由を具体的に明示せず、かつ原告の営業上の都合を無視して一方的に反面調査を実施し、もって原告の信用を毀損したものである。従って、本件調査手続には瑕疵があり、本件課税処分は違法である。

(原告の主張に対する被告の反論)

所得税法はいわゆる申告納税方式を採用し、納税義務者が納付すべき税額はその者の申告により確定するのを原則とするがが、最終的な税額の確定は税務署長に留保され、その更正のないことを条件として当該申告が承認されるにすぎないものである。そして、税務署長は納税義務者がその義務を正しく履行したか否かを常に調査する職責を有し、申告税額が自己の調査したところと異なる場合には、申告納税額に拘束されることなく、国税通則法二四条にもとづきこれを是正しうるのである。

ところで、右法条に定める調査は、各税法に定める課税要件事実の充足を認識し、租税債務額を確認するためのあらゆる行為を総称し、かつ更正処分に先行するが、そうだからといって、法律上当然に更正処分の手続的な適法要件とされるものではなく、法がその履践を更正処分の要件として要求する場合に限って、手続的な適法要件となる。しかるに、国税通則法はもとより現行税法上その旨定めた規定は見当らないから、国税通則法二四条にもとづく調査は更正処分の手続的な適法要件ではないというべきである。

また、いかなる場合にいかなる調査をなすかについては、右法条その他の法律によるも何らその手続が定められていないから、調査の範囲、程度および手段等については、すべて税務署長等の権限ある税務職員の合理的裁量に委ねられていると解すべきである。従って、税務署長において、過少申告と疑うに足りる事情の有無を問わず調査することも何ら妨げられるものではなく、調査の際理由を明示すべき義務もなく、またいわゆる反面調査の方法を採ることも妨げられるものではない。

以上の次第であるから、本件課税処分は適法である。

第三、証拠

(原告)

原告本人尋問の結果を援用し、乙第一ないし第三号証の成立を不知とし、乙第四号証、第五号証の一ないし三の成立を認めた。

(被告)

乙第一ないし第四号証、第五号証の一ないし三を提出し、証人加納一義、同小柳津一成、同井上昇の各証言を援用した。

理由

一、請求の原因一ないし三記載の事実(本件課税処分の内容、経緯等)については、当事者間に争いがない。

二、原告は、被告のなした本件調査手続が違法であり、この違法な調査にもとづく本件課税処分もまた違法であると主張するので、先ずこの点について判断する。

所得税法はいわゆる申告納税方式を採用し、納税義務者が納付すべき税額はその者の申告により確定することを原則としているが、最終的な税額の確定は税務署長に留保され、その更正のないことを条件として当該申告が是認されるにすぎないものである。そして、税務署長は、納税の適正を期するため、常に納税義務者がその義務を正しく履行したか否かを調査する権限と職責を有し、申告税額がその調査したところと異なる場合には、申告税額に拘束されることなく国税通則法二四条にもとづきこれを更正しうるのであり、しかも、税務署長がいかなる場合にいかなる調査をなすべきかは法律に特に定めるところがないのである。従って、税務署長は、過少申告なることを疑うに足りる事情の存する申告について調査しうるのは勿論であるが、かかる疑いの存しない申告について調査することも何ら妨げられるものではなく、該調査の結果万一過少申告であることを発見した場合には、申告税額を更正しなければならないのである。

また、国税通則法二四条、二六条、二七条等の規定によるも、右調査については何らその手続が定められていないから、調査の範囲、程度および手段等については、すべて税務署長等の権限ある税務職員の合理的裁量に委ねられていると解すべきである。従って、右調査が実質的に不十分であったとしても、かかる事由は更正処分の違法事由とはならないものと解される。仮に、調査が不十分であったため更正された所得金額ないし税額が不当であった場合には、これを理由として更正処分の取消を求めれば足りるのである。

もっとも、更正処分をなすにあたり、税務署長において全く調査をなすことを怠った場合には、当該更正はこれをなしうべき前提要件を欠くことになるので違法となるものと解すべきであり、また、質問検査権の行使が社会通念上相当と認められる限度を超えて濫用にわたった場合など調査手続に重大な違法があり、しかもその調査のみにもとづいて更正がなされたような場合には、当該更正は調査せずしてなされたものと同視すべきであり、違法として取消されうるものと解すべきである。

本件において、原告は調査手続の違法を主張するけれども、右に述べたとおり、税務署長は過少申告なることを疑うに足りる事情の有無を問わず調査することも何ら妨げられるものではなく、調査の際具体的理由を明示すべき義務もなく、また調査深度の問題にしてもその裁量に委ねられており、いわゆる反面調査の方法を採ることも妨げられるものではない。従って、この点についての原告の主張は失当であり採用することができない。

そして、証人加納一義の証言および原告本人尋問の結果の一部によれば、被告は、原告が昭和四三年頃住宅を新築した資金の出所の解明と原告提出の係争各年の所得税確定申告書にいずれも収入金額、必要経費の記載がなかったことなどから、調査の必要があるとして、昭和四五年七月中旬から八月末にかけて四回にわたり一宮税務署職員を原告方へ赴かせたこと、その際原告は、右職員の求めにもかかわらず右住宅新築資金の出所を明らかにせず、また係争各年分の営業取引内容の帳簿書類などを提示せず、営業概況などについても明確な説明をなさなかったこと、そのため被告はやむを得ず原告の取引先等を調査するなどしたうえ、原告の所得額を推計して本件課税処分をなしたものであることが認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信することができない。

右事実によれば、本件更正処分については、被告においてその前提となるべき調査をしなかったということができないことは明らかであり、またその調査手続も調査権の濫用にわたってなされたとは認められない。そして、被告は原告の所得額の実額調査につとめたが、実額計算に必要な帳簿書類が提示されない等原告の協力が得られなかったため、やむを得ず推計課税をなしたものであることが明らかである。従って、本件課税処分の手続的違法をいう原告の主張はすべて理由がない。

三、そこで、次に本件課税処分(但し、異議決定により一部取消後の分)の当否について判断する。

原告が係争各年当時、一宮市内で繊維受託加工業(通称子機)を営んでいたことは当事者間に争いがないところ、被告は、原告の取引先を調査して係争各年毎の売上金額を把握し、右金額に類似同業者の平均算出所得率を乗じて原告の算出所得金額を算定し、これから特別経費、事業専従者控除額を控除して、本件係争各年分の営業所得金額を推定するものである。以下、この点について検討する。

1. 売上金額

原告の売上金額が次のとおりであることは当事者間に争いがない。

昭和四二年分 三、二二五、四四二円

昭和四三年分 三、二一六、六五八円

昭和四四年分 三、三五三、九四七円

2. 算出所得率・算出所得金額

被告はその主張のような方法で類似同業者各八名の平均算出所得率を求め、これを原告の所得率とみなしているが、被告のなした同業者の選定方法等右所得率の算出方法は、同業者の類似性、同業者数および資料の客観性等の諸点よりみて、合理性を有すると認めることができるものである。そして、証人井上昇の証言により真正に成立したものと認める乙第一、二号証および同証人の証言によれば、昭和四二年ないし同四四年の各平均算出所得率は次のとおりであることが認められるので原告の右各年分の算出所得金額も次のとおりとなる。

昭和四二年分 算出所得率 六三・二九パーセント

算出所得金額 二、〇四一、三八二円

昭和四三年分 算出所得率 六〇・七九パーセント

算出所得金額 一、九五五、四〇六円

昭和四四年分 算出所得率 六三・五四パーセント

算出所得金額 二、一三一、〇九七円

原告は、右平均算出所得率をもって即原告の所得率とみなすことの合理性を争い、原告本人は自分のところでは輸出用繊維を取扱っているので納期が厳格であり、そのため高い外注費を支払うなど経費が多くかかる旨供述するが、また一方自己の営業努力の結果輸出用品は繊維台数の割に高い利益をあげていると述べているのであって、原告の営業が類似同業者に比較してその所得率がより低いものであるとは到底認め難いところである。

3. 特別経費

(一)  雇人費

証人加納一義および原告本人尋問の結果によれば原告の使用人は女子三名であったことが認められるところ、証人小柳津一成の証言により真正に成立したものと認める乙第三号証および同証人の証言によれば尾西毛織健康保険組合に所属する女子組合員一人当たりの平均賃金が別表(八)記載のとおりであることが認められるので、これを原告方従業員一人当たりの平均賃金とみなして右三名分の雇人費を算定すると次のとおりである。

昭和四二年分 六五二、四五五円

昭和四三年分 七三〇、六四七円

昭和四四年分 八五〇、三一七円

(二)  建物減価償却費

被告が原告所有の各建物についてその主張のような方法で減価償却費を算定したことは相当であると認められるところ、成立に争いのない乙第四号証、第五号証の一ないし三によれば建物減価償却費は次のとおりである。

昭和四二年ないし四四年分

各二七、四七一円

4. 事業専従者控除額

次のとおりであること当事者間に争いがない。

昭和四二年ないし四四年分

各一五〇、〇〇〇円

5. 譲渡所得金額

昭和四二年分については、営業所得のほか、土地の譲渡所得金額一四三、四二三円があることは、当事者間に争いがない。以上によれば、原告の本件各係争年分の総所得金額は、前記別表(四)(総所得金額計算表)記載のとおり、

昭和四二年分 一、三五四、八七九円

昭和四三年分 一、〇四七、二八八円

昭和四四年分 一、一〇三、三〇九円

となる。そして、所得控除額が別表(一)ないし(三)の当該欄記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

四、してみると、前記当事者間に争いのない本件更正処分による認定所得額(但し、異議決定により一部取消後の額)が係争各年分とも前記認定所得金額の範囲内であることは明らかであるから、本件各更正処分はいずれも適法であり、かつ昭和四二年過少申告分にかかる過少申告加算税賦課決定分も適法である。

よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないから失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山田義光 裁判官 窪田季夫 裁判官 辻川昭)

別表(一)

昭和四二年分課税処分表

〈省略〉

〈省略〉

注 異議決定における加算税の基礎となる税額は、異議決定による申告納税額から確定申告による申告納税額を控除した金額であるから、正当な過少申告加算税は四七、〇〇〇円に五%を乗じた二、三〇〇円となる。従って異議決定では原処分時に賦課決定された過少申告加算税を二、七〇〇円減額することとなる。

別表(二)

昭和四三年分課税処分表

〈省略〉

〈省略〉

注 過少申告加算税の基礎となる税額が二〇、〇〇〇円未満の場合(算出した過少申告加算税の金額が一、〇〇〇円未満の場合)には、取扱い上過少申告加算税の賦課決定はしない。

別表(三)

昭和四四年分課税処分表

〈省略〉

〈省略〉

注 昭和四三年分に同じ。

別表(四)

総所得金額計算表

〈省略〉

「同業者選定基準」

(1) 歴年繊維受託加工業を営んでいるもので次の各号に該当しないもの

(イ) 年の中途において開廃業、転業または業態を変更したもの、あるいは他の業種目を兼業しているもの。

(ロ) 小規模事業者で帳簿組織が簡易な記録方式(現金主義)によっているものおよび期間損益が明確になされていないもの。

(ハ) 更正または決定処分が行なわれたもののうち、国税通則法の規定に基づく不服申立て期間および出訴期間を経過していないものならびに不服申立てまたは出訴中のもの。

(2) 一宮市において織物の下請加工を行っているもので次の各号のいずれにも該当するもの。

(イ) 従業員(本人、事業専従者および使用人)が五人のもの。

(ロ) 年間の加工賃収入が

〈1〉 昭和四二年分については一六一万円以上四八四万円以下のもの。

〈2〉 昭和四三年分については一六一万円以上四八四万円以下のもの。

〈3〉 昭和四四年分については一六七万円以上五〇四万円以下のもの。

(ハ) 織機台数が四台のもの。

別表(五)

算出所得率計算表(昭和42年分)

〈省略〉

別表(七)

算出所得率計算表(昭和44年分)

〈省略〉

別表(六)

算出所得率計算表(昭和43年分)

〈省略〉

別表(八)

尾西毛織健康保険組合所属女子

組合員の平均標準報酬月額

〈省略〉

「物件目録」

〈省略〉

別表(九)

建物取得価額算定表

〈省略〉

注 昭和三九年一月一日の指数(一八四・〇)は、昭和三八年九月の指数(一八〇・七)と昭和三九年三月の指数(一八七・三)との平均値である。

別表(一〇)

建物減価償却費算定表

〈省略〉

注1. 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四一年大蔵省令三七号改正後のもの。以下「減令」という。)五条別表一一

注2. 減令別表 一

注3. 減令別表 一〇

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